住宅の温熱環境を考えること、それは家族の健康を考えること

わが国の住宅内では、入浴中だけでも交通事故死をはるかに上回る年間およそ17,000人が亡くなっていると推計されています。特に冬季はこうした入浴中の急死が起こりやすく、特に高齢者の事故が多くなっています。

既存住宅の大半は、温熱環境に問題がある

既存住宅の大半は、断熱性能や気密性能が不足しているといわれており、そのような住宅では、壁や開口部(窓や扉など)から出入りする熱の量が大きくなります。そのため、「冷暖房の効きが悪く、夏は暑く冬は寒い」、「各部屋間の温度差が大きい」、「同一室内でも足元と天井付近の温度差が大きい」、「壁や窓に結露が発生しやすい」などの問題を抱えています。このような住宅では特に高齢者において住宅の温熱環境に起因する健康被害が発生しやすくなると考えられています。

住宅の温熱環境の向上は、健康増進に欠かせない課題

国土交通省が作成した住生活基本計画(全国版)においても、ヒートショック防止等の健康増進に関わるリフォームの促進が盛り込まれるなど、住宅の温熱環境の向上はわが国における喫緊の課題となっています。

研究委員会 委員長のご紹介
高橋龍太朗氏
研究委員会 委員長のご紹介

多摩平の森の病院 院長 東京都健康長寿医療センター研究所 前副所長

老年学・老年医学専攻。京都大学医学部卒業後、東京都健康長寿医療センターに勤務する傍ら、厚生労働科学研究事業「高齢者に対する適切な医療提供」の研究班、健康長寿住宅エビデンス取得委員会委員長を務めるなど30年以上、高齢者の健康生活、自立支援に関する臨床と研究に従事。また、ヒートショック研究の第一人者としても活躍。

入浴中の突然死と、温熱環境が健康に与える影響が明らかに
暮らし創造研究会では、「断熱・気密改修と暖房設備の組み合わせで形成される温熱環境の向上と実験の参加者(高齢者)の健康指標(血圧など)の向上の相関を検討し、高齢者が健康に暮らすために必要な住宅内の温熱環境を明らかにする」ことを目的の1つとして研究を行ないました。
その結果、断熱・気密改修や床暖房の使用により住宅の温熱環境を整えることで実験の参加者(高齢者)の血圧が低く保たれることを示唆するデータが得られ、住宅の温熱環境が居住者の健康に影響を与える可能性が示されました。また、入浴実験においては、脱衣室や浴室の室温を25℃に暖めておくと18℃の場合に比べて入浴時の血圧変動が抑えられること、また脱衣室や浴室が25℃と暖められた条件では、湯温が41℃よりも少しぬる目の39℃のほうが心臓への負担が少ないことを示唆するデータを得ることができました。
このような結果から、超高齢社会を迎えるわが国においては、より健康で快適な生活を送るために住宅の断熱・気密性能の向上や、適切に暖房を使用することが重要だといえます。